胸が痛い(胸痛)や
胸の圧迫感を突然感じる
誰もが経験したことのある「腹痛」とは異なり、「胸痛」や「突然の胸の圧迫」を感じたときには、驚かれることと思います。胸には肺だけでなく心臓がありますので、「心臓の病気かもしれない」という心配もありますね。
実際に、肺・心臓の病気を原因として胸痛や胸の圧迫が生じることがあります。特に、狭心症や心筋梗塞、大動脈解離などを原因として症状が現れている場合には、命にかかわる問題となります。
胸痛は、ピリピリ、キリキリ、チクチクと、さまざまな感じ方があります。これらの胸痛、あるいは圧迫感が生じたときには、緊急の対応が必要になることが少なくありません。
胸痛の症状や原因
胸痛の現れ方、またその代表的な原因をご紹介します。
胸の痛みを感じた時に確認すること
1どのような痛みか
- 刺すような痛み
- 締め付けられるような痛み
- 圧迫されるような痛み
2どこが痛いのか
- 左胸部
- 前胸部
- 背中
- 首・肩
- 局所的か広範囲か
- いつも同じ場所か、毎回異なる場所か
3痛みはどれくらい(時間)あるのか
- 瞬間的
- 数分
- 数時間
- それ以上
4どのようなときに痛むのか
- 常に
- 動いたとき
- 安静時
- 食事のとき
- 息を吸ったとき・吐いたとき
- 時間帯による傾向
5胸の痛み以外に症状はあるのか
- 動悸、息切れ
- 呼吸困難
- 発熱
- 吐き気、嘔吐
- 冷や汗、めまい など
胸痛を伴う病気
肺・胸膜の病気
胸膜炎・膿胸
細菌感染などによって、胸膜に炎症をきたし、膿が溜まる病気です。
胸の鈍い痛み、発熱、悪寒などの症状を伴います。また痛みについては、呼吸に伴い強さが変動する傾向があります。
気胸
肺に穴があき、空気が漏れることで、肺がしぼんでしまう病気です。
胸痛、咳、息切れなどの症状を伴います。なお痛みは、深呼吸をすることで増悪します。
やせ型の、比較的若い男性に多く見られます。
心臓・血管の病気
心臓や血管に原因がある胸痛は、緊急の対応が必要になることが少なくありません。
狭心症・心筋梗塞
狭心症の場合は、労作時に胸部の中心から左側にかけて、キリキリと締め付けられるような痛み・圧迫感が生じますが、通常数分で治まります。場合によっては、首や肩まで広範囲にわたって痛むことがあります。
心筋梗塞の場合は、より強烈な痛みが、長く続きます。また、呼吸困難、冷や汗などの症状も見られます。
大動脈解離
突然の、胸を引き裂かれるような強烈な痛みが現れ、そのあと範囲を拡大します。意識障害、失神、腹痛などの症状を伴うこともあります。
神経・筋肉・骨の病気
肋骨骨折
肋骨骨折は、外傷、激しい咳などを原因として起こります。
安静時は鈍く痛み、身体を動かしたとき、深呼吸や咳をしたときなどにはその強さが増します。
肋間神経痛
肋骨に沿って走る「肋間神経」が障害されることで、突発的な胸痛が生じます。
痛みは片側だけで、深呼吸・咳、身体を動かすことで強くなります。
帯状疱疹を原因として肋間神経痛が起こることもあります。
がん
肺がん、胸壁まで浸潤したがんなどによって、強く、かつ持続性のある胸痛が発生することがあります。
消化器の病気
逆流性食道炎
逆流した胃酸が、食道で炎症を起こします。
胸やけやげっぷなどに加えて、胸痛を伴うことがあります。
そのほかの消化器疾患
胆嚢疾患、急性膵炎などを原因として、胸痛が発生することがあります。
ストレスや心因性の病気
心臓神経症
検査で異常が見つからないにもかかわらず、精神的なストレスがかかったときに、胸痛、動悸・息切れなどの症状が起こることがあります。
更年期や女性特有の病気
微小血管狭心症
冠動脈の末梢に存在する血管が収縮して起こる狭心症です。生活習慣、動脈硬化とは関係なく、閉経に伴うエストロゲンの急激な減少によって起こることが多いとされています。
一時的な胸痛を主症状としますが、背中・肩、あるいは顎や喉へと拡大することもあります。通常の狭心症と異なり突然死の心配はありませんが、心不全のリスクが高くなると指摘されており、治療が必要です。
胸痛の検査
問診では、どのようなとき、どのような痛みが出るのかをお伺いします。
その上で、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が疑われる場合には、心電図検査、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、心筋シンチグラフィーなどを行い、診断します。
大動脈解離、肺血栓塞栓症が疑われる場合には、胸部CT検査を追加する場合は、連携医療機関やクリニックをご紹介しています。
胸痛の治療
胸痛の原因に応じた、適切な治療を行う必要があります。
手術が必要な場合は、連携医療機関へとご紹介します。
狭心症・心筋梗塞
心臓を巡る血流を改善するため、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術が行われます。
大動脈解離
血圧を下げる薬による保存療法を行います。裂けた血管の部位によっては、緊急手術が必要になります。
肺血栓塞栓症
血栓を溶かす薬による保存療法、あるいはカテーテル治療や手術によって、血栓を除去します。
自然気胸
気胸によって肺から漏れ出た空気を取り除くため、胸に管を入れる治療を行います。
胸が痛いと感じる時に
どの診療科を受診すべきか?
腹痛や発熱、頭痛と異なり、胸痛があるときには受診する診療科選びにお困りの方も少なくないかと思います。
一般内科などでも、胸痛の診療はしてもらえますが、ここまでご説明した通り、心臓や血管の異常によって胸痛が現れることがあり、中には重大な病気が原因になっているケースも見られます。
そのため、胸痛が生じたときには、循環器内科を受診されることをおすすめします。なお、今まで経験したことのない強さの胸痛、冷や汗・脂汗が出るほどの胸痛、身動きがとれないほどの胸痛に見舞われた場合には、一刻を争う事態である可能性が高くなります。すぐに、救急車を呼んでください。