高血圧が気になられた方へ
このページをご覧いただきありがとうございます。高血圧の世界的な有病率は1990年から2019年の30年間で約2倍に増えており、日本では約4300万人と指定されています。 また、目標血圧にコントロールされている人は高血圧症の方の約3分の1に過ぎないという事実があります。いくらかある理由のひとつにクリニカルイナーシャ(臨床的惰性)と言われ、医療従事者も患者さんも血圧が高いということに慣れてしまっていることが挙げられます。当院では個々の目標血圧達成できるように食事や生活習慣全般の確認と見直しを行いながら内服薬の調整を行っていきます。少しでも動脈硬化性疾患の発症予防に向けて、治療の取り組みを一緒に頑張りましょう。
高血圧とは
高血圧とは、血圧が高い状態を指します。糖尿病や脂質異常症とともに代表的な生活習慣病であり、放置していると動脈硬化の進行、および心筋梗塞や脳卒中などの原因となります。
自宅で測定する血圧と
クリニックで測定した血圧の違い
「診察室血圧」と「診察室外血圧」
診察室で測った血圧を「診察室血圧」、診察室以外(ご自宅など)で測った血圧を「診察室外血圧」と言います。
そもそも血圧は、緊張やストレスの程度、身体活動などにも左右するため、大きくこのように分けられているのです。
そして高血圧を診断される基準も異なります。診察室血圧では140/90mmHgが、診察室外血圧では135/85mmHgが基準となり、この数値を超えた場合に、高血圧と診断されることとなります。
高血圧治療ガイドライン2019
2019年に改訂された最新の高血圧治療ガイドラインでは、75歳未満の成人の目標血圧を130/80mgHg未満に、75歳以上の方の目標血圧を140/90mmHg未満に定めています。
また、既往のある場合については、糖尿病・脳血管障害の方で130/80mmHg未満、慢性腎臓疾患(尿蛋白陰性)方で140/90mmHg未満をそれぞれ目標値としています。
さらに、診断においては診察室血圧よりも、診察室外血圧を優先する、とされています。なお診察室外血圧の目標血圧は、75歳未満の成人では125/75mmHg未満に、75歳以上では135/85mmHg未満に、それぞれ定められています。
血圧の働き
血圧とは、「血管の壁に与える血液の圧力」のことを指します。血圧は、酸素・栄養を含んだ血液を、身体の各部位へと循環させる働きを担っています。
最高血圧と最低血圧の違い
最高血圧とは、血液を送り出すために心臓の筋肉が収縮したときの血圧です。一方で最低血圧とは、心臓の筋肉がもっともゆるんだときの血圧のことです。
一般に「上(うえ)が〇〇で、下(した)が△△」と血圧を表すことがありますが、この「上」が最高血圧を、「下」が最低血圧を意味します。
高血圧には2種類あります
本能性高血圧症
はっきりとした原因の分からない高血圧です。実は高血圧のうち、約90%がこの本態性高血圧症にあたります。ただ、まったく原因が分かっていないというわけではなく、以下のようなリスク要因が影響しているものと考えられています。
いわゆる、生活習慣病としての高血圧症です。
リスク要因
- 塩分の摂り過ぎ
- 肥満
- 飲み過ぎ
- ストレス
- 自律神経の乱れ
- 運動不足
- 野菜、果物の摂取不足
- 喫煙
二次性高血圧症
腎臓疾患、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、あるいは薬剤の副作用など、明らかな原因が認められる高血圧です。
高血圧症の症状
高血圧は、糖尿病や脂質異常症と同様に、ほとんど自覚症状がありません。
しかし、治療をせずに放置し動脈硬化が進行すると、心臓に負担がかかり、動悸、息切れ、手足のむくみなどの症状が現れるようになります。
50歳前後の女性に多い?
更年期に増える高血圧とは
男性と女性を比べると、女性はエストロゲンというホルモンを分泌する分、動脈硬化が進行しにくいと言えます。
しかしエストロゲンは、50歳前後の閉経を境に急激に分泌量が低下します。そしてこれにあわせて、血圧が高くなってくるケースが多いのです。
高血圧は、男性も女性も注意が必要です。
隠れ高血圧にご注意
クリニックやご自宅などで血圧を測ったときには正常である一方で、実は職場などではずっとストレスを抱えて高血圧になっている、というケースがあります。これを、「隠れ高血圧」や「仮面高血圧」と呼びます。
職場などでストレスを抱えている自覚のある方は、特に注意が必要です。
高血圧症が引き起こす病気
高血圧であることで、常に血管に高い圧力がかかりつづけますので、さまざま病気を引き起こす原因になります。
動脈硬化
血管が硬くなった状態です。血管の壁は分厚く、もろくなります。
これにより、血管が詰まったり、血管が破れたりといったことが起こり得るのです。そして動脈硬化は、心筋梗塞、脳卒中などの原因となります。
心筋梗塞・脳卒中
動脈硬化が進むと、血管が詰まりやすくなります。そして血管が詰まると、その先に酸素・栄養を含んだ血液が行き届きません。
これにより、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血など、命にかかわる病気が引き起こされることがあります。
心不全
心臓のポンプ機能が低下した状態です。身体に十分な酸素・栄養が行き届かなくなり、すぐに疲れる、動悸・息切れがするといった状態に陥ります。悪化し、命にかかわることもあります。
腎不全
腎臓の細かい血管に負荷がかかることで、腎臓の機能が低下します。
そして、正常時の30%以下にまで機能低下した状態を「腎不全」と言います。さらに悪化すると、最終的には人工透析が必要になります。
その他
大動脈瘤、大動脈解離、眼底出血などを引き起こすこともあります。
自宅で血圧測定を
習慣づけましょう!
「高血圧治療ガイドライン2019」に記載されている通り、現在はご自宅で、リラックスした状態で測定する血圧が重要視されています。
高血圧と診断を受けた方、高血圧を予防したい方は、できる限り、毎日血圧を測定できる環境を整えましょう。
血圧検査する時のポイント
ご自宅で血圧を測定するときのポイントをご紹介します。
1半袖または袖の生地が薄い服で
正確に血圧を測るため、半袖、または袖の生地が薄い服の状態で測定しましょう。
2毎日、朝と夜の2度測定
血圧は、活動をしたりストレスを受けたりすると変動します。その変動が少ない、「朝起きてすぐ」と、「夜寝る直前」の2度、毎日血圧を測るようにしましょう。
3椅子に座って背筋を伸ばして測定する
椅子に座った状態で、背筋を伸ばし、血圧計のベルトが心臓と同じ高さになるようにして測定します。
4測定直前の深呼吸
測定の直前には、深呼吸でリラックスしましょう。緊張すると、血圧が高くなってしまいます。
52回1セットで
血圧測定は、血圧計のベルトを巻いたまま、2回連続で測定します。
つまり、朝起きてすぐに2回連続、夜寝る直前に2回連続、1日で計4回、測定することになります。
高血圧の治療法
高血圧の治療では、第一に食事・運動療法を行います。そして食事・運動療法で十分な効果が得られない場合など、患者様と相談の上、薬物療法を導入します。
当院では、薬に頼り過ぎない高血圧の治療を行うことを大切にしております。
1食事・運動療法で生活習慣の改善
塩分摂取量の制限
日本人は、世界的に見ても塩分摂取量の多い国です。1日の塩分摂取量は6グラム以下が望ましく、その基準のクリアを目指します。
外食が多い方は、自炊を増やすのが有効です。塩分を減らす代わりに、出汁をとる、トマトなどに含まれるアミノ酸の旨味を利用する、スパイス・薬味を活用することで、おいしく感じられる料理がつくれます。
栄養バランスの見直し
野菜、果物を積極的に摂りながら、栄養バランスの良い食事を継続しましょう。
また、飲み過ぎも控えます。日本酒であれば1合、ビールであれば500mlが1日の適量と言われています。もちろん、飲まないのが理想的です。
適度な運動
ウォーキング、水泳、軽いジョギングなどを30分以上、週に3回以上行うのが目安です。食事療法とあわせて、無理のないダイエットにも役立ちます。
なお、長らく運動から離れていた方は特に、いきなり強度の高い運動をすることは避けましょう。
禁煙
喫煙は、血管を収縮させ高血圧・動脈硬化の原因になります。
他の生活習慣病、呼吸器疾患、がんなどのリスクを下げるためにも、必ず禁煙しましょう。
寝る姿勢は「横向き」がおすすめ
高血圧の方は、睡眠時無呼吸症候群を合併していることが少なくありません。
寝るときは、舌や脂肪が気道を塞がないように、横向きで寝るのがおすすめです。
なお当院では、睡眠時無呼吸症候群の治療も行っております。
2薬物療法
薬物療法では、主に以下のような薬を使用します。
利尿剤
尿の排泄を促すことで、血液の量を減らし、血圧の降下を図ります。
血管拡張薬
血管を広げることで、血圧の降下を図ります。
神経遮断薬
心臓・血管への過度の刺激を抑え、血管をリラックスさせることで血圧の降下を図ります。
レニン・アンギオテンシン系薬
ホルモンの働きを抑制することで、血液の循環量を調整し、血圧の降下を図ります。